博士のけんきゅうしつ☆TA08その2★

誰じゃ、わしの研究室に勝手に入っとるのは!

なんじゃ、また君か!ん?鍵をかける習慣がないんじゃ‼悪いか!

わかったらさっさと出て・・・ ほう、焼きプリンか。気が利いとるな。

なんじゃ悩みか。しょうがない。よし、そこに座れ。

 

そうじゃったな、TA08やっとるんじゃったな。ほう、言われた通りバネとオイルも柔らかくして走ってみたと。

殊勝なことじゃ。で、どうじゃった? タイムはあまり変わらない?じゃろうな。

君も含めてセッティングをいじってまずタイムを確認するのはみんなやっとるからな。

それに対してとやかくいうつもりもないが、なるべくなら「何かを変えて、良い結果のみを求める」経営者視点ではなく、

「良くも悪くも結果を観測する」科学者視点も必要かと思うぞ。もちろん最終目標は「速く走ること」じゃろうが、

それも実験の積み重ねじゃろ。実験の結果にいいも悪いもないじゃろう。

ここで言う「結果」は走行フィーリングと、走る前にサスの硬さを確かめたときの印象、

できれば走った時に、良くなったコーナーと悪くなったコーナー、いろいろあると思う。

できるだけ細かく観測できれば実験の精度があがるっちゅうわけじゃ。

ぼんやりとでも走った時の印象はあるか?ふむ、バッテリーが少なくなってきたときの方が

走りやすかった?なるほど、いや、非常に興味深い。この結果だけ見れば普通はそのバネを外して

ゴミ箱に投げ込むかもしれんな。

いやいや、君が下手というわけではない。

むしろその逆。そもそもセッティングを変えているのにタイムが変わらないという時点で下手ではない。

それで、走る前に硬さは変な感じがしたと。具体的には?

まず使ったことがないくらい柔らかいバネを付けているのに、思ったほど柔らかくない。と。

その原因を教えてやろう。

「スカッフ」というのを知っとるか?いや、スカーフではない。活舌が悪くてすまんな。

なんじゃ、シン・カメンライダーを見たのか。わしはまだ見とらんからネタばれするなよ?

スカッフは日本語でいうと「引きずり」じゃ。これはほとんどの左右独立サスのRCカー、

特にスイングアームやダブルウィッシュボーンタイプに多い現象じゃ。

車を正面から見て、上から押してみろ。シャーシが地面に着いて止まる。

そのとき、トレッドはどうなっとる?気にしたことないか。まあ普通はそうじゃろうな。

何も触ってないとき(ちゃんとある程度の車高がある状態)とフルストロークした状態では、

トレッドが変化するはずじゃ。普通はタイヤが内側に「引きずられて」トレッドが縮まる。

この現象が「スカッフ」スカッフ量というわけじゃ。スカッフが多い、少ないなど言ったりする。

タイヤはある程度グリップしとるから、このスカッフ量が多いとサスが動きにくくなる。

これは、この形式のサスペンションの宿命じゃから、完全に無くすことは難しい。

まあ、悪影響が出なければ特に気にしなくともよいな。ちょっと分かりづらいじろうから、

絵を書いてやる。こう・・・ササッと・・・

これが車体、地面・・・

 

まあこんな感じの車があったとして、

これをフルストロークすると、タイヤの軌跡はこの赤で書いたようになる。

 

ん?地面から浮いとる?書くのが面倒なんじゃ。脳内で変換してくれ。

上のアームが短いからナックルを支持しとる点は下のアームより多く内側に移動する。

したがってタイヤは傾く。 よくある設定じゃな。

このときのタイヤ・・・接地面の中心は内側に移動する。ほんの少しな。

ところが、上下のアーム長を逆にしてみるとどうじゃ。

 

こうなる。

さっきの赤タイヤに比べて、接地面が大きく内側に移動したのがわかるじゃろう?

こうなってくると、引きずりの量が気になってくる。

つまり、「足が硬い」状態になりえる。自分のタイヤのグリップ力がサスの動きを邪魔しだす。

これは、タイヤのグリップが弱ければその影響が少なくなる。

実際の車は、ここまで上下のアーム長に差は無い。しかし、もともとの角度によっては

ほとんど同じ長さのアームでもタイヤの軌跡は、青タイヤのようになったりもするじゃろうな。

そこでTA08のアーム長を見てみる。 なんと上下ほとんど同じ、か、キャンバー調整や

ロアアームの取付位置によっては上の方が長く設定されたりもする。

君の車はそうなっとるじゃろう。おそらくフロント。

リヤに関してはロールセンターを上げるためにシャーシ側よりタイヤ側の幅を広くしとるじゃろう。

ナックルの上にスペーサー入れたり・・そうそう、そういうことじゃ。

ところがフロントはロールセンター下げたかったんじゃろう。スペーサーを減らして、へたすると

シャーシ側の方が広いかもしれんな。なおかつキャンバーを減らすとアッパーアームが

伸びるからな。 だいぶ「引きずっとる」かもな。「バネのレートのわりに硬い感じ」

はこいつが犯人じゃろうな。

だから走り出しは変な感じ、後半タイヤのグリップが落ちてきて普通になるんじゃろ。

フロントだけ硬い足・・・になっとるわけじゃ。

いやいや、スカッフ量が多い=ダメ ではないぞ。これはこれでメリットも生む。

ロールセンターは前に教えたが、「ダイナミックロールセンター」は聞いたことがあるか?

まあ、詳しくはそのうち説明してやるが、下のアームを短くすると、ロールしたとき(足が動いたとき)

に、さらに沈み込もうとする力が働く。これはこれで非常に良い特性と言える。

まあ、使い方しだいじゃな。ちなみにノーマルの設定ではアーム長の上下バランスのわりにスカッフ量はそれほど

多くない。うかつにいじるとデメリットが出る・・・という感じじゃな。

それ以外にも、バギーなどはこのスカッフ量を多くして沈み込むと硬くなる設定にすることもある。

大きなジャンプの着地などは踏ん張るじゃろうな。

まあ、そういうことも含めて、なるべくデメリットを出さないよう、なおかつ自分の子のみにあった特性に

セッティングしていくわけじゃ。

そうか、まあわかりづらいじゃろうな・・・

今日はこれから忙しいのでな。続きはまたこんどはなしてやろう。

あ、それと勝手に部屋にはいるでないぞ!こんどはプリンだけじゃすまんからな!

 

2023年04月05日