博士のけんきゅうしつ☆TA08その1★
なんじゃ、また君か。
わしは忙しいんじゃ。これからレースシーズンになる。タミグラも近づいて・・・
ん?TA08?調子が良くないからTA07を使う?なに言っとるんじゃ!
新しいものを使え!店のために!ひいては世の中のために!
・・・いや、なにも泣くことはなかろう。すまんわしも強く言い過ぎた。
君がなんども同じようなことを聞くもんだからつい・・・
わかったわかった、話くらいは聞いてやろう。それとわしの事は師匠ではなく博士と呼べとあれほど・・・
はぁ、いや、いいからそこに座れ。
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まず、どう調子が悪いんじゃ?なに?「トラクションが足りない」じゃと?
出してきたな?ラジコン用語。「トラクション」の意味を知っとるか?
直訳すると「駆動力」じゃぞ。それが足りない?ギヤがイカれとるかベルトが空回りしとるという
意味か?違うじゃろ。君が言いたいのは「コーナーの立ち上がりでアホみたいにアクセルを
ふかしてるのに他の車より速度が乗らない」ということじゃろ?
どうしても横文字を使いたい意識高い系の君なら「トラクションをかけずらい」が正しく伝わるな。
ようするに前に出ない感じということじゃな?なら、曲がりもイマイチじゃろう?
グリップが軽いんじゃろ。
なに?重い?
あ~なるほど。「車の動きが重い」のと「グリップが重い」を混同しとるな。
あれじゃろ、横に食ってるけど縦に食わないとか言っちゃうタイプか?
言おうとしてた?ハハ、じゃろうな。
いいか、グリップに縦も横も無い。どちらかにしか使えないだけじゃ。
横に100%使ってたら縦には0%じゃ。横に50なら縦も50。
そして、軽く動かない感じというのは、グリップ力が少ないと起きやすい。
グリップが強ければ、ブレーキをかけても、ハンドルを切っても、アクセルを入れても、
即座に車がアクションを起こす。それが遅ければ「重く」感じる。
そのうえでアンダーステアやオーバーステアという話になる。
タイヤが滑らなければ車は軽く動く。滑れば重く動く。ようするに君の車は、
それ以前の問題。グリップ力不足じゃ。
新しいタイヤを買え。タミグラ、タミチャレのSTかGTクラスじゃろ。タミチャレタイヤなら
けっこう減りも早い。
それかもう少し気温が高くなるのを待て。勝手に路面が食ってくる。
いや、だからイチイチ泣くな。分かったから。
たしかに、TA08はそういうクセがあるのはわしも小耳にはさんでおる。
まず、車重が軽い。他のツーリングカーシャーシよりも100g近く軽い。
グリップ力とは摩擦力。重ければ重いほどグリップは高くなる。
しかしあくまで静止時の話。車はすばやく動かなければならない。
その際には軽いほど良い。慣性があるからな。ここで求める2つが相反するわけじゃ。
グリップは欲しいじゃろう。だからといって重くするのは基本的には無しじゃな。
しっかりとした足回りが付いとるからな、この車には。
次に足回り。ん?なに?ダンパーが寝てるのが良くない?
お前・・・いや、また泣かれるのは面倒だな。
たしかに、「路面に対しては」寝ているな。だがよく見てみい。「サスアームに
対して」はどうじゃ? それでも寝てる?いや、もっとよく見てみい。
ダンパーの取付位置はサスアームの上にあるじゃろう。
![](../img/image28.jpg)
こういうことじゃ。どうじゃ、普通じゃろ。サスアームの形状に惑わされやすいが、
大事なのは取付の位置じゃ。
本来のサスアームの角度は、シャーシ側取付位置とこの車ならナックルの下側になるが、
実際にダンパーがついているのはそれより上じゃ。したがってダンパーが立っているのと同じことになる。
フルストロークしたらサスアームとダンパーはほぼ90度になり、一般的なツーリングカーと変わらんな。
ついでに言っとくが、ダンパーが寝とったとしても、それはグリップ力とは一切関係がないぞ。
なんでキョトンとしとるんじゃ。まあ、たしかによく言われる都市伝説ではあるがな。
ダンパーとサスアームの角度はレバー比と言ってな、・・・まあそのうち説明してやる。
ようするに寝てるとバネもオイルも柔らかくなり、立てればどちらも硬くなる。
それだけじゃ。もちろん硬い柔いでグリップ「感」が変わることもある。しかし直接的には一切関係が無い。
なんじゃ、ダンパーが立った方が重心位置が上がる?あんまり笑わせるでない。
君はボディの裏に5円玉・・・いや1円玉か?を貼ったら違いがわかるのか?わかるわけないじゃろう。
君のTA08の、グリップ力不足の原因は他にある。
上から押してみて、足が硬い感じはしないか?するじゃろう。
なに?でもソフトのバネを使ってる? まあ、予想通りの答えじゃな。
どんなバネを使っていようが、それはレバー比によってどうにでもなるんじゃ。
レバー比についてはそのうち説明するから、少し待っとけ。
この車は、サスアームが短いんじゃ。他の一般的なものに比べてな。
フロントなんかは特に。まあこれは見ればわかるじゃろ。Cハブを持たない形式だからじゃ。
もちろんメリットもデメリットもある。大事なのは理解と使い方じゃ。
サスアームのどこにダンパーが付いとる?車体寄りかタイヤ寄りか。
かなりタイヤ寄りじゃろう。そしてサスアームは短い。
つまり他のツーリングカーよりも、同じバネやオイルでも「硬くなる」傾向じゃな。
レバー比というのはけっこう効くんじゃ。設定によっては「バネセット」のハードとソフトが
逆転するくらいにもできる。
これで逆にもっとダンパーが寝てればいいんじゃが、そこは普通の角度。
レバー比によって足が硬めの設定。車重は軽い。
ようするに軽い車で足は硬い。うまく使えば速そうじゃな、この車。
まあその分シャーシはかなり柔らかい。そこでバランス取ってるんじゃろ。
だから言っとるじゃろう。夏になればプラスチックのシャーシも柔らかくなり、
タイヤも食う。問題解決じゃ。どうしても今、寒い時期から調子を上げたいなら
柔いバネを買うのじゃ。取付できれば何でも良いぞ。ビッグボア用でなくとも構わんよ。
たいして変わらん。それよりも足を動かした方が良いじゃろう。
まずは大きくロールやピッチングが起こるくらいに足を柔らかくして、それから他の部分を
セッティングすると効率が良い。まったく動きが無い状態でいろいろセッティングするから
迷宮入りするのじゃ。
足が硬めになる原因はもう一つあるんじゃがな・・・
わしはここの技術顧問じゃかならな。忙しいんじゃ。
君のような迷える子羊が群れでおる。羊飼いを雇わなきゃならん。
足が硬くなるもう一つの原因?また今度じゃ。いっぺんに教えてもどうせまた聞きに来るじゃろうが。
まずはバネを変えてみよ。かなり変わる。と同時に違和感も出るはずじゃ。
次?わからん。気が向いたらじゃ。
ふむ。ありがとう師匠?博士じゃ!