博士のけんきゅうしつ☆TA08★その7

おっ、そろそろ来る頃だと思っとった。

もうすぐタミグラ北海道じゃしな。君のTA08もだいぶいい感じになってきたんじゃないか?

うん?もうバッチリ?極まった?

そうかそうか。君は毎回レースを楽しめるタイプじゃな。

いや、いいんじゃ。こっちの話じゃ。

で、ボディを選んどる途中じゃったな。

ボディの種類はだいたい決まったと。で、そのボディはノーマルと軽量タイプの

2種類があると。

ふむ、それは迷うな。

と、言いたいところじゃが、そうではない。

もしわしが自分で選ぶなら、軽量タイプの一択じゃ。

まあまあそう興奮するな。理由はこうじゃ。

たしかに、世間ではノーマルタイプの方が「グリップ感があって走りやすい」と、

君の言うように使い分ける考え方もある。

しかし、レースじゃろ?

レースというからには、速さを競っとるわけじゃ。

直線をまっすぐ走るだけの競争ではなく、カーブが何か所もあるところで

競争しとるんじゃ。ならば、車は軽い方が良い。

実車と違って、ラジコンの場合は「車体の最も高い位置にある重量物」となる。

コーナーでは強い横向きの力が常にかかっている。

それは、ボディまでを含めた車体の重心位置にかかる。

当然、重心位置が高いほど素早い動きをするには不利じゃ。

ここまではいいな?

これが基本的な考え方っちゅうわけじゃ。

で、実際のラジコンカーのレースを想定すると、

「理想と現実の違い」というものが出てくる。

ちょっと先に確認しておくが、君はノーマルと軽量を試した時、

車体全体の重量は同じになるようにしているか?

ふむ。そうじゃろうな。いや、本格的に試験をするなら、そうしないとダメという

だけで、一般的にはそんなことやっとれんしな。

つまり、ノーマルボディのときは車自体が重く、軽量ボディのときは

車自体が軽いというわけじゃ。

それさえわかればいい。

重心位置のが高くなり、不安定になる(ロールが大きくなり、振り返しも大きくなる)

のは、ハイグリップかつ高速な状況が顕著になる。

逆に言えば、それほどグリップも上がらず、かつ低速な条件だとデメリットが出ない。

出ないばかりか、それこそ「グリップ感がある」ということになる。

これは、グリップ「感」ではなく、実際にグリップが上がっているはずじゃ。

なにしろタイヤのグリップ力は「どれだけタイヤに重さが乗るか」次第じゃからな。

速度の落ちるタイトコーナー、その立ち上がり、などは車体が重く、

かつ重心位置も高い方が扱いやすく、実際に速く走れると思う。

しかし、「重い」ということは慣性も強く働く。

大きく重たいトラックなどはブレーキの制動距離が長いじゃろ。

それとおなじことで、一度動き出したら止まらない、曲がらない。

では少しまとめると、「物体を速く動かす競争」としての理想は、軽く低重心。

じゃが、難しいタイトコーナーが不安とか、素早く動きすぎると目が追い付かない

など、現場での不安があるならば、あえて理想から少し外した設定にした方が

結果は良くなる。

つまり、君のテクニック次第でベストが決まるというわけじゃ。

これは、あくまでボディのみ、もっと言えばノーマルと軽量のみで全て決めるなら。

という話で、実際には他にもセッティング箇所は山のようにある。

うまく組み合わせればそれぞれの良いとこどりも可能じゃ。

先に話した、「わしなら軽量一択」というのは、「ガチガチの理想形を扱いきる」

という脳筋な理由ではなく、選べるなら軽量タイプを選んだうえで、薄くなりがちな

低速域のグリップは車体側のセッティングでカバーするという意味じゃ。

これは、セッティング能力うんぬんもあるが、レース時の作戦も絡めて考えた方が良い。

具体的には、特設コースの場合は大抵、予選1回目より2回目、決勝とレースが

進むごとに路面のグリップが上がっていく。

それを逆手に取って、みんなが低グリップで苦労しているときに重いボディを使って

良いタイムを出す。路面が上がってきたら軽量に変える、とかな。

うん?レース中にボディを変えるのは怖い?

まあ普通はそうじゃろうな。ましてや目標とするタイムや順位がちらついている

場合は怖くて何も触れない(笑)というのはわしも経験しとるよ。

そのために、普段の練習があるわけじゃ。

何のためにホームコースがあると思っとるんじゃ?(笑)

もちろん、君の言うように本番とまったく同じ条件ではない。

しかしこれは、例えば本番で使う会場でテストしても同じことじゃ。

そのときの気温や湿度、もっとも大きい要素である、出場台数。

そのコースを走っている車の数じゃ。つまりそのときになってみないと

どんな状況かは誰にも分からないということじゃ。

したがって、自分のホームコースでテストしたことを信じるしかないわけじゃな。

大事なのは、「これで決まり!ばっちり!」を選ぶことではなく、

これとこれの違いがどのように、どのくらい違いが出るのか?をしっかり記憶(記録)

しておくことじゃ。で、ホームコースでもグリップの良い時、悪い時があるじゃろう。

それぞれ違う条件の時に、同じテストをしてみる。

グリップの良い時、悪い時にボディを2種類試す。まあボディに限ったことではないがな。

そうやっておけば、ここぞ!というときに秘蔵のアイテムが炸裂!となるわけじゃ(笑)。

うん?そのテスト方法で今まで弾いたボディも全部やってみる?

うん。そのやる気はいいんじゃが、本番の予選は2回しかないからな!

あっ、もう行ってしもうたか・・・

まあ、まだ本番まで日はあるしな。どうせまた来るじゃろ。

 

 

このお話はフィクションです。登場する団体名、個人は現実とは異なります。

しかしラジコンの理論に関しては多少信じても良いかもしれません。

2023年07月12日