博士のけんきゅうしつ☆TA08★その6

いやースマンスマン、ここのところ忙しくてな。

なに?こんなに電話したのに?しょうがないじゃろ。わしだって暇なわけではないからな。

いちいち履歴を見せんでも・・・あっ、貴様まだわしを「師匠」で登録しとるな!

博士じゃハカセ!

ところで以前は何の話じゃったか・・・ おお、ボディの選び方か。TA08の。

うむ、そうじゃな、で、君はSTクラスに出る予定と。だからウィングを付けられないと。

だから難しいと。

それは、逆じゃな。ウィングの効果は前に話した通り絶大じゃが、あくまで空力特性を決める

「一つの要素」にすぎない。

セッティングの手間が一つ減ったということじゃ。まあ、考えようじゃな。

この考え方こそが、走行性能を追及しない遊びラジコンと競技ラジコンの決定的な違いじゃ。

余計なものを減らしていくか増やしていくかの違いじゃな。

純粋にボディの特性のみで選ぶ方が簡単というわけじゃ。なにも君だけウィング禁止というわけではなかろう。

みんな条件は一緒。

さて、では具体的にどうやって選んでいくのか。

まずは、「自分が欲しい特性」をしっかり決めておく。

レースが近くなると色々な情報が出回る。どこそこの大会での使用率とか、有名選手が使用していた・・・

などなど、スマホで調べただけでもわんさか出てくる。身近な仲間に勧められたとかもあるな。

その一つ一つの信憑性を確認してみるのも楽しいかもしれんが、なかなかに骨の折れる作業じゃ。

じゃが、おそらくその情報一つ一つはすべて本当の事だと思う。少なくとも、実際にその現場で

その選手が使用し、良い結果じゃったんじゃろう。しかし、君にとってのベストかどうかは

保障されないわけじゃ。どうしても、「より良いもの」や「速くなる」ものを短絡的に求めてしまうからな。

信じるものは救われるという言葉も良く聞くし、気持ちは非常によくわかるが、

できれば考えることを放棄せずに自分にとってのベストを選んで欲しいと思う。

で、どういう特性の物が欲しいんじゃ?

ん?「ラップが速くなるボディ」?

そうか・・・君はさては人の話を聞いて理解するのが苦手なタイプじゃな?

まあ良い。で、どうやったらラップが速くなるんじゃ?君が思うに。

直線が速くなればいいと。そうそう、そういう風に自分の要求を掘り下げていくんじゃ。

直線が速いボディ・・・それは比べればわかるな。

基本的に、「空力が弱ければ弱いほど直線の良く伸びる」ようになる。

空力・・・車ではダウンフォースという。文字通り車を地面に押し付ける力じゃ。

当然、強いほどグリップ力が増すが、空気抵抗を下向きに変換しとるわけじゃから空気抵抗も

大きい。つまり速度は落ちるじゃろうな。

まずは手持ちのボディでもっとも直線が速くなるボディを選べばそれで終わりじゃ。

直線のみの区間タイムを計測したらよい。コーナーが絡むと違う結果になるからな。

じゃが、それだけでは「ラップが速くなる」とはならんじゃろうな。

では次のボディに対する要求はなんじゃ?

リヤグリップ。か。では、もっともアンダーステアになる物を選ぶ。

まずはラップを計らずに、じゃ。

2種類あって、違いがわからないと。どちらも同じくらいアンダーステアということじゃな?

で、その2種類を、さっきやった直線の区間タイムを計ってみてくれ。

少し違うと。

同じくアンダーステアの2種類があり、一方が直線っが速い。というわけじゃな?

それは、直線が速いほうが「全体的にダウンフォースが弱いが、リヤの方が強い」

対して、直線が遅いほうは、「全体的にダウンフォースが強いが、リヤの方が強い」というわけじゃ。

このようにデータを整理して考えていくわけじゃ。

ちなみに「曲がるボディが欲しい」という要求でも同じように試せばよくわかる。

さっきの話じゃが、「アンダーステアの2種類で、ダウンフォースが強いものと弱いもの」じゃったな?

これは、路面が十分にグリップしている、もしくは車体の方で十分にグリップが稼げている

なら、ダウンフォースを弱くして直線の速度を稼ぐ。逆に路面のグリップが低いような状況なら、

直線を犠牲にしてでもダウンフォースが強いものを選んだ方が、結果的に「ラップは速くなる」

というわけじゃ。

じゃから、「これを付ければすべて解決!」とはならんわけじゃ。

そのときそのときで手を変え品を変え、よりベターな物を選択するしかないんじゃよ。

「どれがいい!」よりも、「良いものの選び方」の方が百倍くらい大事じゃ。

そういう風に積み重ねていった人が、「セッティング能力が高い人」というわけじゃな。

一切、事前情報を持っていなくても短い時間でより良いセッティングを出せるわけじゃ。

なるほどよくわかったと。ん?軽量ボディ・・・?

あー・・・・そういう要素もあったか・・・

まあ、大事じゃろうな・・・・

よし、また今度じゃ。それまでにレギュレーションで使えるボディをできるだけ用意しとくんじゃぞ。

まあ、とりあえず借り物でもいいから。たしかに全部自分で準備するのは大変じゃからな。

あ、ちゃんと携帯の登録は「博士」にしとくんじゃぞ!

 

 

 

このお話はフィクションです。登場する団体、個人は現実とは異なります。

しかしラジコンの理論に関しては多少信じても良いかもしれません。

 

 

2023年06月08日